*日経サイエンス新年特別号 、「技術で革新 鮭,カキ,ムール貝の養殖 米メイン州の挑戦」の海洋環境を勝手に解説③*
「技術で革新 鮭,カキ,ムール貝の養殖 米メイン州の挑戦」でふれられているこの海域の海洋の描像について勝手に記述していくシリーズ第3回です。
日経サイエンス2月号、p98左下~中央上には、
“メイン湾の水域は,メキシコからカナダまでの大西洋沿岸で最もアルカリ度が低く,その繊細な水質は自然や人間がもたらす環境の乱れに特に影響を受けやすい。”
とあります。これについてみていきましょう。
海水のアルカリ度とは
海水のアルカリ度は、海水に強い酸を加えて、特定のpH値にするまでに必要だった酸の量から求められる、水の特徴をしめす尺度の一つです。海水中に含まれる様々なアルカリ成分(炭酸水素塩、炭酸塩や水酸化物など)の総量を表す数値でもあります。海水中にある炭酸水素塩や炭酸塩などはpH緩衝作用といって、酸や塩基を加えてもpHを保とうとする作用があります(ですから、加えた酸の量から直接pHを求めることができないのです)。外から違うpHの水が入り込んできた際に、アルカリ度が高い海水の方が、pHの変化を抑えることができるため、水の環境変化への耐性の指標になります。
メイン湾のアルカリ度が低いわけ
沿岸域のアルカリ度は、海水と流入する河川水など陸からの水の両方の影響によって変わります。陸起源の水のアルカリ度は土壌の影響が大きく、たとえば石灰岩質では高くなります。
メイン湾は、河川水など陸からの水の流入量はとても少なく、水質は沿岸を流れるラブラドル海流の水の影響が大きいという特徴があります。ラブラドル海流はメイン湾にいたるまでの上流域で氷河の融解水が流れ込むことでアルカリ度が低下しています。この水が流れてくるのでメイン湾はアルカリ度の低い水域となっています。
これらのことから、メイン湾の水はアルカリ度が低く、pH緩衝作用が小さいため繊細で、自然や人間がもたらす環境の乱れの影響を受けやすいといえるのです。
まだまだ続きます・・・