*トリチウムと旅する水*

4月に政府がトリチウムなどの放射性物質を含む福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出の方針を決めたことがニュースになりました。

処理水中のトリチウム以外の放射性物質はどのくらい除去されているかというと、放射性物質の濃度が高い汚染水の処理前と処理後での濃度を比較する資料がありました。

画像のソースとなる資料はこちら

このくらい除去されているのですね。

トリチウム除去が難しいのは化学的性質が水素と同じなのでトリチウムを含む水(T-O-H)と普通の水(H-O-H)を化学的な方法で分離できないためで、現状で利用できる技術がないことが理由のようです。

全く方法がないのかというと、水蒸気になるときに軽い水分子が選択的に蒸発するので(トリチウムを含む水分子は重い水です)、それを利用した技術などは考えられるようです。しかし現実に運用するためには処理速度などの問題があるのでしょう。

*  *  *

重たい水分子というと、トリチウムを持つ以外に、放射性をもたない水素や酸素の安定同位体を含むものが自然界にわずかに存在しています。それらは、大部分の水と比べて、凝結しやすく蒸発しにくい性質を持っています。そのため、水に含まれているこの少し重たい水の割合は、地球の水循環や、南極やグリーンランドの古い氷から過去の気候がどうであったのかを調べたりする手がかりとして用いられています。