*父の旅立ち*

1月終わりのこの冬一番といえる荒天が続いた頃、父が旅立ちました。年末に調子を崩して入院して、一時的に回復して自宅に戻り母と過ごした後の、入院から1週間ほどたった時でした。欠航する飛行機が多い中をなんとか弟が九州からお見舞いに来てくれていた時で、弟がそばにいてくれて母は心強かったと思います。
この頃の父は、ペースメーカーを入れていて週に3回透析に通う生活でしたが、予定があると生活にメリハリが出来ると通院に出かける服や靴にこだわるなど前向きで、明るく毎日を過ごしていました。それ以前から、定年後いくつも大病といわれるものを患いつつも医療と母の支えと本人の努力で復活してきました。それが最後の入院となった日の前日に電話で「今度ばかりはちょっと自信がないんだよ」とちょっぴり弱音をはいていました。
むかし母から、「お父さんが自分はいつ死ぬかわからないと思っているからか、毎日の暮らしの中で見る世界がとても美しく見えるといっていた」と聞いたことがあります。私はその言葉が印象に残って、時折思い出していました。そして、それを聞いて10年以上たった頃から、父はずっと死なないんじゃないかと思うようになっていて、母もそうだったようです。
病院から家に戻った父は、本当に穏やかに眠っている様でした。突然いなくなってしまった父ですが、苦しみのないところに旅立ったのだと思うと、もちろん悲しいのですが、不思議に引き裂かれるような辛さのない毎日を過ごしています。