*日経サイエンス2月号*
『日経サイエンス』2026年2月号が発売になりました。
第1特集は「10代の脳」。
思春期に起こる脳の変化や、不安が生じやすい理由、そしてこの時期ならではの柔軟性について、最新の研究をもとに掘り下げています。
かつて10代の母だった経験も踏まえ、表紙づくりの過程で読者目線からの意見交換に少し関わらせていただきました。

今回の表紙には、小学生から高校生までの子どもたちが描かれています。
10代というのは、成長の途中にありながら、外からは一括りに「思春期」と呼ばれてしまいがちな時期でもあります。
複数あった表紙案の中で、私は
「親が自分の子どもを自然に重ねられること」
が大切ではないかと感じていました。
最終的に採用されたこの表紙は、まさに“小学生から高校生までという10代そのもの”を、そのまま描いている点が印象的です。
この表紙は『日経サイエンス』としては、少し珍しいタイプの絵柄かもしれません。
教育誌に近い印象を受ける方もいると思います。
それでも今回、編集部がこの表紙を選んだ背景には、
「10代の子どもを持つ人たちに、まず手に取ってもらう」
という明確な意図がありました。
10代の脳の変化は、学習や学校生活、進路と切り離して語ることが難しいテーマです。
制服姿の子どもが描かれていることも、そうした文脈を自然に伝える“わかりやすいシグナル”になっているように思います。
子育てをしていると、
「なぜこうなるのか」
「どう支えればいいのか」
と、すぐに答えの出ない問いに向き合う場面が何度も訪れます。
私自身、子どもが小さい頃や中学生の頃など、折々に『日経サイエンス』の子育てや発達に関する別冊を手に取っていました。
また、文系を自認する友人が
「科学的に“こういう可能性がある”と示されると、不思議と納得できる」
と話していたのを思い出します。
科学は、明快な正解を与えてくれるわけではありません。
けれど、親が抱える迷いや不安に、少し距離を与え、考える足場を用意してくれる。
今回の特集は、まさにそうした役割を果たしてくれる内容だと感じました。
* * *
「10代の脳」は、親だけの問題ではありません。
この時期の子どもたちと日々向き合う先生や指導者にとっても、背景にある脳の特性を知ることは、大きな助けになるはずです。
思春期の“揺れ”を、問題として切り取るのではなく、発達のプロセスとしてどう理解し、どう支えるか。
そんな視点を投げかけてくれる一冊だと思います。

