*北アメリカのマングローブ ― 温暖化で移動する鮮やかな緑の林*
マングローブと聞くと、東南アジアや熱帯の海岸を思い浮かべる方が多いかもしれません。
実は北アメリカの沿岸にもマングローブ林が広がっていて、そこには「レッド」「ブラック」「ホワイト」という色の名前を持つ3種類のマングローブが生育しています。
この3種は近縁ではなく、塩水の影響を受ける過酷な環境で進化するうちに、姿や繁殖方法が似てきた「収斂進化」の例です。特徴も異なり、たとえばレッド・マングローブは最も水際に支柱根を張りめぐらせて海岸を守り、ブラック・マングローブはその内陸側に生育し、葉の裏から塩を排出して環境に適応します。ホワイト・マングローブはさらに内陸寄りに育ちます。

図:ブラック・マングローブの葉上での塩の結晶排出
撮影:Ulf Mehlig / Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.5
近年、地球温暖化によって寒波が減り、マングローブの分布は北へと広がりつつあります。その結果、塩性湿地や海辺の生態系が大きく変化する可能性が指摘されています。草原のような湿地がマングローブ林に置き換わることで、生息する生物や炭素循環にも影響が及ぶのです。

図:レッド・マングローブ(Everglades国立公園、2007年)
※撮影:Andrew Tappert / Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0(CC BY-SA 3.0)
最新号『日経サイエンス』11月号では、この「マングローブの大行進」の編集を担当しました。温暖化だけでなく過去の分布拡大の歴史や、研究者たちの現地調査の様子も生き生きと描かれています。気候変動への適応が早いマングローブは、一足先に未来の自然環境を映し出しているかのようです。
興味を持たれましたら、ぜひ誌面を覗いてみてください。
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マングローブの大行進 – 日経サイエンス 11月号