*日経サイエンス7月号*
本日(5月23日)発売です。

今号の私の担当記事その1は、スティーブン・パイン氏による「パイロセンを生きる」です。
・火と人類の関係をめぐる、深く静かな問いかけ
火を操ることで繁栄してきた人類。けれど今、火は私たちの未来を脅かそうとしています。
「火の時代=パイロセン」という視座から、
私たちがどんな時代に生きているのかを見つめ直す一篇です。
著者は、火災史研究の第一人者であり、若き日に森林消防隊員として現場に立った経験をもつスティーブン・パイン氏。
彼は火を「生態学的プロセスでも道具でもない、人類との関係性」と見なします。
その筆致は、科学記事というよりも、思想と歴史を語る文化誌のような読みごたえがあります。
良い火が人類を育み,悪い火は滅ぼすかもしれない。
その選択は,私たちに委ねられている。
静かな一文が、文明と未来を問いかけます。
明快さよりも考える余白を残す文章に久しぶりに出会いたい方にも、ぜひ手に取っていただきたい一作です。
詳細はこちら(出版社公式サイト):日経サイエンス2025年7月号「パイロセンを生きる」
その2は、毎号担当しているヘルストピックス。
今月のテーマは『高齢脳の“年の功”』です。
加齢にともなう脳の変化には、想像以上に大きな個人差があり、
注意力や判断力といった認知機能の一部はむしろ年齢とともに向上する側面もあることが示されています。
加齢=衰えという思い込みを問い直す、希望ある内容でした。